
不安症群
不安症群
不安症は4~5人に1人が発症する、最もよくみられる疾患です。
ヒトは、常に一定の体温や心拍数を保つように作られていることから分かるように、変化を嫌う生き物です。脳も同様であり、不安とは、ある出来事やストレスを察知した時に脳から発信される危険信号で、脳の防御機構の一つと考えられています(正常な不安)。しかし、この防御機構がうまく働かずバランスが崩れてしまうと慢性的に不安を感じるようになります(病的な不安)。不安症群は、この病的な不安とそれに関連する行動障害の特徴を持つもので、パニック症、社交不安症、全般性不安症、限局性恐怖症、広場恐怖症などがあります。不安を感じて悩まれている方は、一度当院までご相談ください。
突然の動悸や息切れに悩まれていませんか?
パニック症の原因について様々な研究が行われていますが、主には脳の構造や機能の異常によるもの、遺伝によるもの、環境のよるものの3つが関与していると考えられており、一概には言えません。カフェインや喫煙はパニックを誘発する物質と考えられていますが、その機序についてはあまり知られていません。ストレスの多い生活を続けていると、パニック症を発症しやすいとの報告もあります。
突然の激しい恐怖や不安感に襲われ、動悸や息苦しさを感じる発作をパニック発作と言います。最初のパニック発作は普段の生活をしていて突然現れることが多いとされています。発作が始まって数分以内にピークに達し、その後次第に消失していきます。その後もパニック発作が繰り返される場合は、いつまた発作が起きるか不安になってしまい、外出を控えるなど普段の行動を制限してしまう方が多くいます。甲状腺機能亢進症や喘息、不整脈などでも似たような症状が現れる場合もあります。早く治療を開始すれば回復も早くなることが多いため、気になる症状がある方は当院までご相談ください。
極度のあがり症だと思っていませんか?
大勢の人から注目されるかもしれない状況に対して、不必要に不安や恐怖を感じてしまうことが社交不安症の特徴です。授業中に当てられてみんなの前で発表する時に緊張するのは普通ですが、みんなの前で発表することが怖くて授業に出席できなくなったら病的です。失敗したくない、嫌われたくない、恥をかきたくない、という気持ちにとらわれ過ぎてしまってお悩みの方は、当院までご相談ください。
極度の心配性だと思っていませんか?
不安の対象が日常生活の中に広く存在することが、全般性不安症の特徴です。将来の見通しが現実に比べて過度に悲観的になりやすく、良くなったり悪くなったりを繰返しながら慢性的な経過を取ることが多いため、治りにくい疾患と言われています。また、他の不安症を合併している場合も多く、“心配しすぎだ“と分かっていても心配で仕方がないという方は、当院までご相談ください。
ある特定の状況を避けて生活していませんか?
限局性恐怖症は、その名の通り恐怖の対象が限局されていて、その対象や状況になると、実際に生じる危険性からは不釣り合いなほど重篤な恐怖や不安を感じる疾患です。過去にエレベーターに閉じ込められた経験があって、それ以降暗い所や閉所、エレベーターに乗ることが怖くて乗れなくなった、子供のころにけがをして血を流して気を失ってから血を見るのが怖くなり、血を見ると気を失うようになった、など過去に怖い経験をした後、それ以降極度に同じ経験をしたくないという気持ちが強まってしまう疾患です。この疾患は子供に多くみられ、1人で複数の恐怖体験を持つことも多いのが特徴です。怖いと思う場所を避けるあまり普通の生活が出来ないでお悩みの方は、当院までご相談ください。
電車やバスに乗るのが怖くなっていませんか?
広場恐怖症の広場という言葉は、ギリシャ語のagoraに由来し、公共の広場を指す言葉でした。砂漠に1人ポツンと放置された状況をイメージすると分かりやすいかもしれません。どっちに歩き出せばいいのかわからない、直ぐに逃げ出せない、助けを求めたくても誰にも助けてもらえない状況で強い不安や恐怖を感じるのが広場恐怖症です。現代ではこのような開放的な空間だけではなく、駅や映画館など人が密集しやすい場所、電車や飛行機などの閉鎖的な空間などの状況も含むようになりました。広場恐怖症の患者さまは、そのような状況に恐怖を感じるあまり、その状況を回避しようとして外出できなくなり社会機能が障害されてしまいます。他の不安障害を合併している例が多く、再発例も多いことが特徴です。恐怖を感じる時は無理する必要はありません。外出できる時に、お気軽に当院までご相談ください。
薬物療法
薬物療法では、抗うつ薬の中でも選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)に分類されるものや、ベンゾジアゼピン系抗不安薬が不安を和らげる作用があり良く用いられています。中でもベンゾジアゼピン系抗不安薬は即効性があるため有効性が高い反面、長期に使用することで依存性や乱用が起こる可能性もあるため、使い方には注意が必要です。
心理社会的治療
心理教育では、病気や薬剤の性質を理解し、どのようにすれば十分な休養をとれる環境を作れるか一緒に考えていきます。また、アルコールやカフェインといった覚醒作用のあるものは避け、しっかりと睡眠をとり、規則正しい生活習慣を身につけることも重要です。
心理療法は、患者さまと丁寧な対話を重ねることで精神的な安定を図っていく治療です。精神分析療法や支持的精神療法、認知行動療法など様々な種類があり、患者さま一人ひとりの状況にあわせた適切な治療を行っていきます。中でも認知行動療法は、認知(現実に起こった出来事に対する受け取り方や感じ方)の歪みを修正し、バランスの良い新しい考え方に変えていくことでストレスを和らげる手法で、最も有効性が期待でき、再発予防効果も高い治療と考えられています。
不安症群は、症状が酷くなる前に適切な治療を行っていけば日常生活の苦痛を軽くすることが出来ます。気になる症状がありましたら、当院までご相談ください。
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