
統合失調スペクトラム症群
統合失調スペクトラム症群
100人に1人が発症すると言われている一般的な疾患です
統合失調症は、脳の機能が正常に働かなくなることにより、聴こえるはずのない声が聞こえたり(幻聴)、感じるはずのない感覚を感じたり(幻覚)、感情や行動にも変化が現れたりと、その症状は様々です。感覚、思考、行動をまとめる(統合する)ことが上手くいかなくなることから、その名前が付けられました。100人に1人の割合で発症すると言われ、決して珍しい病気ではありません。日本での患者数は約80万人と言われています。
統合失調症の初期段階は、比較的症状が軽度であるため患者さま自身が頭痛や脱力などの身体症状を訴える場合や、意欲がなくなるなどの気分症状を訴えることがあり、身体症状症や抑うつ症と誤診され、症状が悪化して初めて統合失調症と診断される場合もあります。早期発見・早期治療がその後の経過に大きな影響を与えるため、出来るだけ早く専門の医療機関を受診することが大切です。気になる症状がございましたら、お早めに当院までご相談ください。
統合失調症の歴史は古く、19世紀から世界各国で精神医学の重要課題として研究が続けられていますが、未だに発症原因の特定はされていません。生まれつきストレスを感じやすく、脳がそのストレスに耐えきれなくなると、脳内の情報伝達回路に異常が生じ、統合失調症を発症するのではないかとも言われています。統合失調症の患者を親に持つ子供の発症率が、一般人口の発症率よりも高いことから、遺伝子レベルでの研究も盛んに行われています。
統合失調症の治療の基本は、薬物療法と心理社会療法です。一人ひとりの症状に応じて治療目標や内容は変わっていきますが、社会機能を回復させることが最終的な目標になります。回復のペースも一人ひとり異なり不安になることもあるかもしれませんが、お困りごとを共有しながらしっかりと治療を続けていきましょう。
薬物療法
先ほどお話ししたように、統合失調症の原因は解明されていませんが、最も単純な理論としてドパミン仮説があります。ドパミン仮説では、幻覚妄想は脳内でドパミンが過剰に分泌されていることが原因であると考えられています。そのため、ドパミン活性を抑える薬である抗精神病薬を使用し症状をコントロールしていきます。
薬による治療を受けることで症状が落ち着いても安心してはいけません。統合失調症は再発率が高く、5年以内に70~80%の割合で再発すると言われています。また、一般的な経過として再発を繰り返すことで発症前に持っていた社会機能が低下していくことが知られている為、再発させないための維持治療がとても重要になります。薬の飲み忘れは再発のリスクとなりますが、現在では剤形も進化しており、内用液、口腔内崩壊錠、貼付剤、持効性注射剤を選択できるようになったため、ライフスタイルに合わせた治療を一緒に考えて行きましょう。
心理社会的治療
心理教育では病気や治療について学びながら、日常生活での困りごとに対する対処法を学んでいきます。
生活技能訓練(Social Skil Training:SST)では、薬物療法では改善させることが難しい症状として、会話のテンポの遅れや視線の合わせ方、他者への情緒的な配慮など、行動面での訓練を行います。デイケアなどの集団療法では、生活リズムの安定化や患者さまの社会的な孤立を軽減し、他者との関わりを通して現実検討識の改善効果が期待できます。
作業療法では趣味活動や就労に近い作業まで、実際に身体を動かしながら、出来ることを増やしていきます。また、活動を通じてコミュニケーション能力も養われます。
当院では、まずしっかりと症状を評価した上で診断を行い、患者さま一人ひとりのライフスタイルに合わせた治療を一緒に考えていきます。当院での治療が困難な場合には、入院治療やデイケア設備を備えた医療機関をご紹介させていただきます。気になる症状がございましたら、お早めに当院までご相談ください。
高齢者に多く、認知症と間違われやすい精神疾患です
妄想症とは、幻聴や妄想など様々な症状が出現する統合失調症とは異なり、基本的に妄想のみが主な症状として出現する疾患です。妄想とは、一言で言えば「誤った確信」のことです。そのため、妄想症では、妄想症状以外は健常者と大きく変わらないという特徴を持ち、日常生活をごく普通に過ごすことが出来ます。一般的に妄想の内容は被害的なものが多く、典型例では「隣人から執拗に嫌がらせを受けている」と確信し、その怒りや苛立ちを隣人にぶつけてしまうことでご近所トラブルに発展してしまいます。本人では病気であることに気づきにくいため、気になる症状の方が身近にいましたら、お早めに当院までご相談ください。
統合失調症と同様に、妄想症の原因も未だに解明されていません。社会的に孤立している方に多く発症している傾向があり、何らかの社会的な背景の関与が考えられています。発症割合は500人に1人の割合とされ、100人に1人の割合で発症する統合失調症に比べ稀な疾患と言えます。女性に発症しやすい傾向があり、発症年齢の範囲も10代から90代までと幅広く、比較的高齢者で多く発症しています。
薬物療法
妄想症の確立された治療はまだなく、統合失調症に準じて抗精神病薬を中心とした治療が行われています。ただし、妄想の内容は体系化されていることが多く、一般的に薬物療法への反応があまりよくありません。効果が得られなかった場合は、抗精神病薬の投与を中止する場合もあります。
精神療法
妄想症では、病識が薄く、治療に関して納得されない方が多くいます。そのため患者さまとの信頼関係を築き上げることが精神療法を行う上で最も重要になります。患者さまやご家族の訴えに耳を傾け、患者さまの不安や苛立ちに対して支持的に対応しながら治療意欲を高めていけるよう努めていきます。
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