
強迫症および関連症群
強迫症および関連症群
およそ50人に1人の割合で発症する、身近な精神疾患です
強迫症および関連症群とは、強迫症の他に、身体醜形症、ためこみ症、抜毛症、皮膚むしり症などを含む疾患群です。強迫症は、ばかばかしいと思いながらもある一つの考えが繰り返し思い浮かび不安になること(強迫観念)と、ばかばかしいと思いながらもその不安を打ち消すように行動してしまうこと(強迫行為)が特徴です。その他の関連症群は、主に身体に焦点を合わせた行動を頻回にしてしまい、その行動を減らそうとする疾患群と言えます。
強迫行為をすることは精神的な苦痛を伴いますが、その衝動を抑えきれず周囲の人々を巻き込んでしまうこともあります。そのため早期に専門の医療機関を受診し治療を始めることで、より早く回復する可能性が高くなります。気になる症状がございましたら、お気軽に当院までご相談ください。
ばかばかしいと思ってもやめられないことで悩んでいませんか?
強迫症の原因の一つとして、神経伝達物質の一つであるセロトニンの調節が上手く機能しないことが示唆されています。また、環境要因として仕事のストレスや低体重出生や幼少期のトラウマ体験など様々なストレスが発症リスクを高めると言われています。双生児研究で遺伝的影響が大きいことの報告もあります。
強迫観念と強迫行為が特徴です。強迫観念は、ばかばかしいと思いながらも何回も繰り返し現れる思考やイメージ、衝動のことで、決して楽しいものではありません。最も一般的なものとして、汚いと思う強迫観念で、その結果として手洗い行為があります。その他にも、鍵を閉め忘れたのでは?という病的疑念や、対称性や正確性に拘ることも多くみられます。特に汚染に関する強迫観念では、ほんの僅かに触れただけで人から人へと広がってしまうと信じ込んでしまい、儀式化された手洗い行為を家族に強要したり、外に出ると身体や服が汚れているという確信めいた疑念から、玄関で服を脱がせてシャワーを浴びさせたりするなど、周囲の人たちが巻き込まれてしまうこともあります。一般的に慢性的な経過を取り、症状が良くなったり悪くなったりを繰返して行くことも特徴の一つです。
自分の身体の一部が醜く思えると思い込んでしまうという、外見に囚われてしまう疾患です。最初は少し違和感を覚える程度なのですが、次第に酷く醜いもののように感じ、認識が歪んでしまいます。そして、鏡で何時間も確認するなど強迫的な行動をするよう追い込まれ、日常生活に支障をきたしてしまいます。少しでも自分の身体に違和感を覚えるようなことがありましたら、お早めに当院までご相談ください。
ため込み症は、その名の通り物を捨てることが出来ず大量にため込んでしまう疾患です。ため込む物の価値は実際の価値とは関係ありません。物に対して歪んだ価値観や愛着があり、手放すことへの恐怖や不安による強迫行為として、ものをため込んでしまいます。その結果、生活空間が乱され、日常生活に支障をきたしてしまいます。
抜毛症は、強迫行為として自分自身の体毛を引き抜くことがやめられない疾患です。ストレスが原因と言われており、解放感と満足感を得るために体毛を抜いてしまいます。一般的には毛髪、眉毛、まつ毛を抜くことが多いです。座って何かをしている時に無意識に体毛を抜いてしまうことや、抜いた毛髪を食べてしまい腸閉塞になってしまうこともあります。思春期での発症が多く、慢性化する前に治療を始めることが大切な疾患です。
皮膚むしり症は、自分の皮膚を強迫的に繰返しむしってしまう疾患です。ストレス発散の為に皮膚をむしることもあれば、暇つぶしに皮膚をむしることもあります。皮膚をむしった時に安堵感や快感につながることもありますが、針やピンセットなどの道具を使ってこすり、噛むこともあります。その結果、皮膚病変を隠そうとする社会的な苦痛や、やめようと思ってもやめられない、恥ずかしいといった心理的な苦痛を伴います。皮膚むしり症は思春期から青年期に発症することが多く、早期に発見し適切な治療へと結び付けてあげることが大切な疾患です。
薬物療法
薬物療法では主に抗うつ薬である選択的セロトニン再取り込み阻害薬(Selective Serotonin Reuptake Inhibitor:SSRI)を使用します。抗うつ薬は飲み始めてから効果発現までに数週間かかるため、その間は即効性のある抗不安薬や少量の抗精神病薬などを一時的に使用することもあります。症状を完全に無くすことに拘り過ぎず、まずは日常生活に支障をきたさない状態、苦悩や苦痛が和らぐ状態を目指していくことが大切になります。
心理行動療法
薬物療法だけで症状を完全に消すことは難しいため、心理療法も行います。支持的精神療法も有効とされていますが、曝露反応妨害法の有効性は薬物療法と同等と言われて言います。この曝露反応妨害法は、不安・恐怖の対象に敢えて立ち向かうことで、実際には何も危険がないということを確認するためのものです。そして不安を打ち消すための行動をしないようにすることを「反応妨害」といい、強迫行為をしなくても、大丈夫なようにしていく認知行動療法の一つです。
当院では、まずしっかりと症状やきっかけとなった出来事をうかがいます。強迫性障害の診断となれば、症状のコントロールや再発予防のために根気よく治療を続けていくことが重要となります。治療を始めればすぐに良くなるわけではないので、焦らずに出来る限り継続できるよう、一緒に治療を行っていきましょう。
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